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拝啓保護者様

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いっとく先生

むぎっ子広場は,2006年の開設当初から関与しており,2012年に一度降板しましたが,今回再登板することになりました。「拝啓保護者様」では,保護者の方から頂戴するご質問・ご相談にお答えする形で進めていきます。僭越ながら(と,一応謙遜したうえで),自信たっぷりに持論を展開いたします。
どんぐりスクール主宰 いっとく先生
ホームページ http://www.dongurikorokoro.com

[2018/02/28] 子どもたちに「勉強の楽しさ」を伝えたい


前回の続きです。

お答え:
 宮沢賢治といえば,岩手出身の童話作家です。東北地方の自然と生活を題材に,童話「風の又三郎」「銀河鉄道の夜」などを書き残していますが,彼が岩手で教員をしていたとき,子どもたちに速さを教えたときの逸話が残されています。

 宮沢先生は,子どもたちに家から学校まで歩いたときの速さを調べる宿題を出しました。たとえば,ある子どもは家を出て,はじめのうちは一人なのでふつうに歩いたでしょう。しかし,途中で友だちに出会うと話しながらなので歩くのが遅くなるでしょう。道ばたの花を見つけたときなどは立ち止まるので,速さがゼロになるでしょう。少し戻ることもあるでしょうし,遅刻しそうになって走ることもあるでしょう。このように,宮沢先生は,子どもたちが通る家から学校までの道のりと速さの関係をより細かく調べさせて,グラフにまとめるように指示しました。

 ふつうは2時間や1時間,または30分の道のりの変化を調べるものですが,宮沢先生はさらに細かく1分,1秒にいたるまで求めたそうです。極限まで極小な時間での進んだきょりを調べるわけです。そう,宮沢先生が何を教えたいのか,おわかりの方も多いでしょう。その一瞬の変化を見る作業が高校数学で学習する微分です。

 グラフで考えれば,ある接点での接線のかたむきを見て,変化率をとらえることができます。すると,ある接点では接線のかたむきが急になっています。つまり,速度が上がっているわけです。一方,別の接点で接線のかたむきが下がっていれば,速度が下がっているのです。

 小学校で学ぶ速さは,所詮「平均の速さ」にすぎません。「時速60kmで2時間走る車があります。」という文章を目にしたとき,「車はずっと時速60kmで走れるはずがない」という感覚を持つのがふつうです。「信号が赤になれば止まらなければならない。渋滞が発生するかもしれない。何を寝ぼけた問題を出しているのか」と思った子どもこそ,正常な感覚の持ち主だと私は考えています。

 そういう感覚を持つ天才児には(実はかなり多くの子がこの感覚を持っています),ぜひ,小学校のときに微分を教えてあげてほしいと思うのです。平均の速さは小学校で学ぶのに,微分は高校2~3年生にならなければ学ばない現代の縦割り教育こそ,大きな問題です。

 もしいま,「そんな無駄なことをしてどうするのか。微分は中学受験では出題されない。高校になってから学べばいいんだ。」とお考えの方がおられたら,その考えこそが子どもたちから「勉強の楽しさ」を奪っている元凶だと自覚して頂きたいと思うのです。

 勉強は,志望校に合格するためにするのではありません。何のために勉強するのか。保護者様にその答えが明確になったとき,お子様は本当の意味で「勉強の楽しさ」を知ることになるでしょう。


掲載日:2017年2月28日
次回の掲載は,2017年3月31日の予定です。

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