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カッシー先生

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カッシー先生

中学受験36年のキャリアがお届けするとっておきの秘策。特に公立中高一貫校の適性検査では,社会科的な知識だけでなく,算数で学習する割合なども同時に求められます。社会と数的処理をじっくり解説していきますよ。
高桐アカデミー塾長 カッシー先生
ホームページ http://www.kotoac.com

[2016/02/15] 小学生にとっての2020年問題とは


 小学6年生のみなさん,まずは公立中高一貫校入試,おつかれさまでした。希望どおりの結果が出せた人も,残念ながらそうならなかった人も,いずれもこの経験はみなさんにとって一生の宝物になるでしょう。

 ところで,みなさんは2020年というと,何を想像しますか。東京オリンピック・パラリンピックでしょうか。もちろん,オリンピック・パラリンピックは大きくて大切なイベントです。また,企業における「2020年問題」もあります。しかし,みなさんにとっては2020年から,大学入試のしくみが大きく変わることが大問題でしょう。

 文部科学省の高大接続システム改革会議は,かなりの時間をかけて大学入試改革の具体策を議論し,2015年9月に「中間まとめ」を発表しました。それによると,「大学入試センター試験」に代わるものとして「高等学校基礎学力テスト(仮称)」と「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を実施するとしています。また,この「中間まとめ」の冒頭部分ではその目的について次のように書かれています。

 未来に生きる子どもたち一人ひとりにとって必要な能力は,(1)十分な知識・技能,(2)それらを基盤にして答えが一つに定まらない問題に自ら解を見いだしていく思考力・判断力・表現力等の能力,そして(3)これらの基になる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度である。
 これからの教育,特に高等学校段階以降の教育は,義務教育段階を基盤として,上にあげた(1)~(3)(これらを本「中間まとめ」において「学力の3要素」と呼ぶ)のすべてを一人ひとりの生徒・学生が身につけ,グローバルな環境の下,多様な人々と学び,働きながら,主体的に人生を切り開いていく力を育てるものにならなければならない。

 「十分な知識・技能」「思考力・判断力・表現力」
 これらの言葉は,どこかで聞いたような気がしませんか。
 そうです。みなさんが公立中高一貫校合格のために身につけてきた学力がまさにこの「学力の3要素」だったのです。

 ですからこれから大学入試システムがどのように変わっていったとしても,みなさんのこれまでの学習をさらに進めていけば何も心配することはないのです。

 今後10~20年で,現在ある職業の半分はなくなるであろうといわれています。これから日本は,ますますグローバル化が進み,何が起こるかわからない状況になっていくでしょう。どんな時代になったとしても,この「むぎっこ広場」で学習してきたみなさんが,これからの日本の先頭に立つリーダーの一人になることを期待しています。


掲載日:2016年2月15日
次回の掲載は,2016年3月14日の予定です。

[2016/01/09] 自助と共助が防災と減災のキーワード


 近年,巨大(きょだい)台風や記録的な猛暑(もうしょ),大雨など,極端(きょくたん)な気象現象がたびたび起こるようになりました。また,これらのえいきょうにより,洪水(こうずい)や土石流などの災害も発生しています。

 思い出せば,昨年9月には,台風18号のえいきょうで発生した南北に連なる帯状降水帯が,関東や東北地方に記録的な大雨を降らせました。この大雨により,茨城県常総市では鬼怒川(きぬがわ)の堤防(ていぼう)が決壊(けっかい)し,多くの家が流されました。

 では,こうした被害(ひがい)は未然に防ぐことができなかったのでしょうか。決壊した堤防付近は「現状では10年に一度程度の大きい水害には対応できない」として,国土交通省が改修を計画していました。つまり,その工事が今回の大雨に間に合わなかったわけです。国土交通省は全国の河川の改修工事を進めていますが,すべての自然災害を未然に防ぐこと(これを防災といいます)は現実的に不可能だと断言しています。

 防災は非常に大切です。しかし,完璧(かんぺき)な防災が不可能となれば,次に大切なのは減災です。減災とは,文字通り災害の被害を減らすということです。減災はふつう3つに分けて考えられています。それが「自助」「共助」「公助」です。自助とは自分の身は自分で守ること,共助はその場にいる人々と協力して助け合うこと,公助は警察や消防などの行政が中心となっていくことをいいます。

 減災の考え方は,1995年に発生した阪神淡路大震災で注目されました。倒壊(とうかい)した建物に生きうめになったり,閉じこめられたりした人のうち,警察や消防などの行政によって救助された人はサンプル全体のわずか1.7%にすぎませんでした。他方で,自力でその場からにげた人が34.9%,家族に救出された人が31.9%,近所の人や友人に救助された人が28.0%という結果でした。これらの数字を見ても,災害が起きたときに自助と共助がいかに大切であるかがわかるでしょう。消防を待っている余裕はないのです。

 また,自助のためには日ごろから災害発生時にどのような行動を取るかを考えておく必要があります。

 2011年に起きた東日本大震災では,岩手県釜石市(かまいしし)での津波(つなみ)による死者・行方(ゆくえ)不明者は1000人以上にのぼりました。しかし,市内の小中学生全生徒2926人中,学校を休んでいたなどの5人をのぞく全員が津波からのがれることができました。生存率はなんと99.8%です。
 被災(ひさい)したときに学校にいた児童生徒だけでなく,下校していた子どもたちも自らの判断で高台に避難したというからおどろきです。さらに,周辺にいた大人たちの命も救いました。大人顔負けの想像力や判断力で危機を乗り切った釜石の子どもたちの体験は,危機対応のモデルケースとして日本だけでなく世界からも注目を集め,「釜石の奇跡(きせき)」といわれています。

 この奇跡の裏にかくされていたのは,2004年から続けられていた徹底(てってい)した防災教育でした。自助のための学習を続けたことで,周りのみんなをも助ける共助につながったのです。みなさんも防災や減災について考え,行動できるように意識を高めてほしいと思います。


掲載日:2016年1月9日
次回の掲載は,2016年2月15日の予定です。

[2015/12/14] 東京オリンピック・パラリンピックの取り組み


 2020年7月から8月にかけて,東京で56年ぶりとなるオリンピック・パラリンピックが開かれます。これまでに新国立競技場の建設やエンブレムなどの問題に直面してきましたが,今回のコラムでは,あと5年足らずの間に取り組んでいくべき,その他の課題について考えてみたいと思います。オリンピック・パラリンピックには世界中から多くの人たちが日本を訪(おとず)れます。そういった人たちに「日本に来てよかった」と満足してもらうための課題です。

 1つ目は「ユニバーサルデザイン」の推進(すいしん)です。ユニバーサルデザインとは,文化,言語,国,年齢(ねんれい),性別などのちがい,障(しょう)がい,能力のいかんを問わずに利用できる施設(しせつ),製品,情報の設計(デザインともいう)のことです。日本語のわからない外国人のために,わかりやすい絵文字を使って表示をおこなうこともユニバーサルデザインの一例です。公立中高一貫校入試でも,ユニバーサルデザインに関する問題は大変よく出題されているので注意が必要です。
 なお,ユニバーサルデザインとバリアフリーはよく似ていますが,バリアフリーは高齢者や障がい者にとって障がいとなるものを取りのぞくことが本来の目的である点で,ユニバーサルデザインとはことなります。

 2つ目は宗教(しゅうきょう)や習慣のちがいを考えた施設やサービスを提供(ていきょう)することです。たとえば,イスラム教教徒は世界で15億人以上いるといわれており,きびしい戒律(かいりつ)(守らなければならない決まり)を守って生活しています。かれらが日本に来て一番困(こま)るのが食事だそうです。
 イスラム教では,食べてはならない食材(ぶた肉など)が決められており,また,調理方法にも決まりがあります。そこで,このような決まりにしたがって調理された食材であることを示すために「ハラルマーク」があります。このハラルマークのついた食品を提供できるお店を増やさなければなりません。

 3つ目は外国人を「おもてなし」できる人材を育てることです。現在,小学6年生のみなさんも2020年には高校2年生になっています。それまでには,日本を訪れる外国人を英語などの外国語で「おもてなし」できる人材に育ってほしいと思います。何も特別なことをする必要はありません。中学生になって学習する内容に真剣(しんけん)に取り組み,自分の興味や関心のあることを学習し,他人に対して思いやりの気持ちが持てればよいのです。

 オリンピック・パラリンピックは世界中から多くの人たちが集まり,世界一を争うスポーツの祭典です。そして,競技を通しておたがいに理解を深め,世界平和に貢献(こうけん)できます。そんなすばらしい場面をすぐ近くで多くの世界中の人たちとたくさん見ることができるようにしたいですね。


掲載日:2015年12月14日
次回の掲載は,2016年1月11日の予定です。

[2015/11/09] 小規模農家のための減反政策廃止へ


 今回はお米の話をしたいと思います。時代は70年以上前にさかのぼります。

 戦前の日本は深刻(しんこく)な食料不足でした。当時の政府はこの問題を解決するために米の生産量を増やす必要にせまられ,新しい法律を制定しました。その法律とは,政府が農家から高い価格で米を買い入れ,消費者に対しては安い価格で米を販売するというものです。この結果,農家は安心して米が作れるようになり,一方の消費者には米が十分いきわたるようになりました。米の生産量は大きく増加し,日本は食料不足からだっすることができました。

 戦後,日本人の食生活はすっかり豊かになりましたが,1960年代になると一転して米が余るようになります。日本人の食生活の変化によって,米の消費量が減っていったのです。一方で,高級ブランド米といった付加価値(かち)の高い米へのニーズが高まるなど,従来(じゅうらい)の制度が機能しなくなりました。

 また,生産した米はそのすべてを政府が買い上げることになっていましたが,少しずつ自主流通米とよばれる政府を通さない米も増えていきました。自主流通米の多くは良質な高級ブランド米です。つまり,政府が買い上げる米は品質がそれほど高くないので大量の売れ残りが発生し,政府が買い上げない自主流通米ばかりが売れるという事態が起きたのです。

 これにより,大量の在庫米をかかえる国の負担がどんどん大きくなっていきました。米の生産量が消費量を上回れば,米の価格は下がります。そこで,米の価格が下がらないようにするためには,米の生産量を減らせばよいということで実施されたのが減反政策です。ただし,生産量を減らしてしまうと小規模農家は経営が立ちゆかなくなります。そこで,減反に協力した農家には補助金を支給することで,政府は小規模農家を保護することになりました。

 その減反政策も2018年に完全に終了します。直接のきっかけになったのは,TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の締結(ていけつ)です。今後日本の農業を強化させていくことが必須の状況下では,農業そのものを大規模化して,競争力をつけていく必要があります。そのためには,小規模農家を支援(しえん)する減反政策を続けることはできないのです。

 しかし,減反政策をやめたからといって農業そのものを大規模化できるかといったら,そこには疑問の声も上がっています。優良な農地は,大規模農家や農業法人によって良質な高級ブランド米が植えられ,十分な競争力を保つことができるでしょう。しかし,兼業農家が細々と耕作する農地の中には条件の悪い場所が多く,これらは集約化の対象にならない可能性が高いからです。

 なお,政府は減反政策を終了する代わりに新しい補助金制度を作りましたが,これについてはまた別の機会に取り上げたいと思います。


掲載日:2015年11月9日
次回の掲載は,2015年12月14日の予定です。

[2015/10/12] ノーベル賞創設の背景と今後の日本のゆくえ


 ノーベル賞は,ダイナマイトの発明によって,科学史のみならず人類史のゆくえをも変えたといわれるアルフレッド・ノーベルの遺言(ゆいごん)によって,1901年に始まった国際的な賞です。かれは,世界中にダイナマイト工場を90か所以上作り,実業家として大成功をおさめました。かれの作ったダイナマイトはパナマ運河などの工事現場や,鉱山の採掘(さいくつ)現場などで活用され,人類の進歩に多大な貢献(こうけん)をしました。

 しかし,ダイナマイトは兵器にも利用され,多くの人々の命をうばう結果になりました。もちろんかれは,ダイナマイトが兵器に利用されることはわかっていましたが,それまでよりも強力な兵器が作られることで,戦争が早く終わることなどを期待していたようです。

 1888年,かれにとって大きな衝撃(しょうげき)となった事件が起こります。フランスの新聞に「武器の売買でばく大な富を築いた『死の商人』アルフレッド・ノーベル氏死亡(しぼう)!」という見出しの記事が掲載(けいさい)されたのです。病死した兄のルードヴィと取りちがえた記事でしたが,あやまった報道とはいえ,自分の評価はこんなにひどいものなのかと,かれははげしいショックを受けました。

 結婚(けっこん)もせず,子どももいなかったかれは,この事件の後,自分の死後の評判をとても気にするようになっていったのです。そして1896年12月10日,63歳(さい)のかれは一通の遺書(いしょ)を残して息を引き取ります。身内がだれもいない,孤独(こどく)な死でした。

 その遺書のなかで,かれは自分の遺産のほぼすべてをもとに基金を作ることを指示します。そして,その基金の利子を毎年その前年に人類に多大な貢献をした人に賞の形で分配することにしたのです。1901年12月10日第1回ノーベル賞授与式(じゅよしき)が行われました。12月10日はかれが亡(な)くなった日です。

 1901年はちょうど20世紀が始まった年です。それから100年以上たった現在でも,ノーベル賞は世界で最も権威(けんい)ある賞として世界中の注目をあびています。アルフレッド・ノーベルの名は,かれが望んでいた通り,ノーベル賞を創設(そうせつ)した偉大(いだい)な人物としてこれからも語りつがれていくことでしょう。

 さて,日本では今年もノーベル賞受賞者が出て,話題になっています。しかし,2000年以降(いこう)に相次いでいる受賞は,かつての研究の「貯金」のようなものであり,それがノーベル賞という形になって出てきているように思います。

 実際,それらの研究の多くは,1960年代から80年代に発表されたものです。当時に比べて,現在の研究環境(かんきょう)はかなり悪くなっているのが実態です。将来(しょうらい)のことを考えると,連日のノーベル賞のニュースを手放しでは喜んではいられないと思います。

 これを読んでくれている公立中高一貫校を目指すみなさんの中から,将来,ノーベル賞を受賞できるような研究者が出てくれることを期待しています。


掲載日:2015年10月12日
次回の掲載は,2015年11月9日の予定です。


[2015/09/14] 自転車の取りしまりが強化されています


 近年,みなさんが気軽に乗っている自転車が原因で起こる交通事故が増えています。警察庁(けいさつちょう)の統計によると,平成26年の自転車関連事故はおよそ11万件で,交通事故全体のおよそ20%をしめています。

 自転車事故全体のおよそ84%が自動車との接触(せっしょく)事故ですが,自転車対歩行者や自転車対自転車,自転車単独の事故もおよそ8000件発生しており,死亡(しぼう)事故も80件以上発生しています。

 気軽な自転車も無理な運転をすると相手にけがを負わせるだけでなく,最悪の場合は死亡事故につながる場合があります。そうなると,刑罰(けいばつ)などの刑事上の責任だけでなく,多額の賠償金(ばいしょうきん)を請求(せいきゅう)されるなど,大きな責任を負うことになります。万が一の事故に備えて,損害賠償責任保険に加入することも大切です。

 このように,自転車による重大事故が増えてきたことにより,2015年6月1日から道路交通法が改正されました。その内容は,違反行為(いはんこうい)について,3年間に2回以上の取りしまりを受けた場合,自転車運転者講習の受講が義務づけられるというものです(対象は14歳以上)。講習は3時間で,5700円の受講料が必要です。これを受講しなかった場合は,5万円以下の罰金(ばっきん)が科せられ,いわゆる「前科者」のあつかいになります。

 では,自転車を運転するときに気をつけることをまとめます。

■原則,車道を左側通行すること
 ただし,道路標識で指定された場合や,13歳未満,または70歳以上の人などは,例外的に歩道を通行できます。

■かさを差して運転してはいけない
 傘を自転車に固定して使用するのも違反です。つまり,雨の日に自転車に乗る場合はレインコートの着用が必要です。

■携帯(けいたい)電話を使用しながら運転してはいけない
 自転車運転中の携帯電話の操作(そうさ)だけでなく,チラッと見るだけでも安全運転義務違反になるので要注意です。

■2台以上で並列に運転してはいけない

■イヤホンやヘッドフォンで音楽をききながら運転してはいけない

■2人乗りはいけない
 ただし,一般自転車の場合,16歳以上の運転者が6歳未満の幼児(ようじ)1人に限り専用椅子(せんよういす)に乗車させるのは認(みと)められています。また,幼児2人を同乗させることができる特別構造の自転車の場合,6歳未満の幼児2人乗車までが認められています。

 みなさんも自転車に乗るときには注意してくださいね。


掲載日:2015年9月14日
次回の掲載は,2015年10月12日の予定です。

[2015/08/10] 猛暑とフェーン現象,ヒートアイランド現象


 今年の夏も暑い日が続いています。東京では,猛暑(もうしょ)日(1日の最高気温が35℃以上の日)の連続記録を更新(こうしん)しているようです。私(わたし)が子どものころは,気温が30℃をこえるとかなり暑いと感じ,33℃をこえることはめったにありませんでした。しかし,最近では33℃を上回る日がめずらしくなくなり,最高気温が30℃と聞けば,今日はすずしいなと思ってしまうほどです。

 なぜ日本はこれほどまでに暑くなってしまったのでしょうか。今回はこのことについて考えてみたいと思います。その原因は3つあると思います。

 1つ目は地球温暖化(おんだんか)のえいきょうです。二酸化炭素やフロンなどの温室効果ガスが増加したために,地球全体があたたかくなっています。東京都心部では,過去100年の間に平均気温が3℃上昇(じょうしょう)しています。しかし,地球温暖化による気温上昇は1℃程度にしかならないそうです。では,残りの2℃の原因は何でしょうか。

 それが2番目の原因のヒートアイランド現象です。ヒートアイランド現象は,都市部の気温がまわりより高くなる現象です。海の中の島のように,その場所だけ温度が高いのでこのような名前がつきました。
 都市部の気温がまわりより高くなる原因は,大きく分けて次の3点です。

■1 地面が道路や建物でおおわれていること
 都市部の地面のほとんどは,アスファルトの道路やコンクリートでできた建物におおわれています。これらアスファルトやコンクリートは熱をためこむため,なかなか冷めません。

■2 人々の活動による発熱が多いこと
 自動車からの排気(はいき)やエアコンの室外機から出される空気は,とても近くには立っていられないほど熱くなっています。都内を走行する自動車や家庭やオフィスで使用されるエアコンの台数は増え続け,都市部の夏はますます暑くなっています。

■3 緑地や水面が減少したこと
 都市部では,林や田んぼなどの緑地が減少し,川などがうめ立てられたり,おおいがかぶせられて地中化されたりしました。 緑は水を吸収(きゅうしゅう)し,晴れて気温が高くなると,地面や空気の熱をうばって蒸発(じょうはつ)します。また,川の水も蒸発するときに,空気の熱をうばいます。 このように,緑地や水面が減ってしまうと,地面や空気の熱がうばわれることなく,熱がこもったままになってしまいます。


 話をもとにもどしましょう。3番目の原因としてあげられるのがフェーン現象です。
 フェーン現象とは,風が山脈をこえてやってくるときに,その風の温度が高くなる現象のことです。具体的には,風が山にそってふきおろしてくると,高度が100m下がるごとにその風の温度が1℃上がります。つまり,2000mの山脈の上空に20℃の空気があったとすると,平地にふきおろしてくるときには40℃の熱風になっているのです。

 関東地方で夏に気温が高くなることで有名なのは,埼玉県熊谷市(くまがやし),群馬県館林市(たてばやしし)・前橋市・伊勢崎市(いせざきし)などです。これらの場所では,夏の日中,南からふいてくる風が,東京都心部でヒートアイランド現象によりあたためられた熱風となります。また,西からふいてくる風が秩父(ちちぶ)の山をおえてふきおろしてきます。このときにフェーン現象により熱風になり,気温を上昇させるのです。

 フェーン現象は自然現象なので,私たちにはどうすることもできません。しかし,地球温暖化とヒートアイランド現象については私たちにできることがたくさんあります。公立中高一貫校入試でもその点が多く問われています。まずは,私たちの日々の生活を見直してみましょう。


掲載日:2015年8月10日
次回の掲載は,2015年9月14日の予定です。

[2015/07/13] 選挙権拡大の背景-18歳は大人なのか?-


 2015年6月中旬の通常国会で公職選挙法が改正され,選挙権の年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられました。日本で選挙権が拡大するのは1945年に「20歳以上の男女」に選挙権が認められて以来70年ぶりのことです。今回は,この選挙権拡大の背景について考えていきましょう。

 みなさんは「シルバー・デモクラシー」という言葉をご存じでしょうか。日本は急速に高齢化社会が進行しています。さらに,高齢者の投票率は若者世代よりも高い傾向があります。その結果,若い世代よりも,高齢者向けの政策が重点的に実行に移される。これがシルバー・デモクラシーです。

 選挙権の年齢を引き下げるのは,若い世代の政治に対する参加意識を高め,投票率を向上させることがねらいだといわれています。公職選挙法の改正により,2016年の夏に実施される予定の参議院選挙から,新たに約240万人が投票可能になります。全有権者数は1億人をこえていますから,240万人が加わっても数としてはそれほどのちがいにはなりません。しかしながら,70~74歳の高齢者の投票率が7割をこえているのに対して,20~24歳の投票率は3割程度とかなり低くなっていますから,若者の政治意識の高まりによって投票率を向上させる効果は期待できるかもしれません。

 しかし,これだけでは若者の政治参加を進めていくのには不十分でしょう。必要なのは次の2点です。

① 政治教育
 18歳といえば高校3年生に相当します。この年齢までに主権者である国民としての自覚と,正しい選挙行動ができる判断力を身につけなくてはなりません。それには学校での政治教育が重要になってきます。

② 被選挙権の拡大
 被選挙権とは,議員候補者として立候補できる権利のことです。現在は,参議院議員と都道府県知事になるには30歳以上,衆議院議員などその他の選挙では25歳以上にならなければ立候補できません。これまでの被選挙権が選挙権に比べて高い年齢になっている合理的な根拠はありません。25歳で衆議院議員に当選すれば,総理大臣になる可能性があります。それなのに東京都知事にはなれないなんておかしいと思いませんか。これらの選挙に立候補できる年齢も18歳以上に引き下げれば,若者の政治参加が一気に進むかもしれません。

 ただし,ここで一つの大きな問題があります。日本の法律では18歳は未成年であるということです。18歳で結婚しようと思えば親の同意が必要になりますし,古本屋で本を売るときにも親の同意が必要です。これらは未成年者を守るために決められているのです。罪を犯したときも同じですよね。

 このままでよいのでしょうか。選挙権を持つということは,社会制度の変更である法律の新設や改正について,間接的な決定者になるということです。

 有権者といえば,投票して議員を選ぶだけというイメージがあるかもしれませんが,要するに主権者になるということです。その主権者が,親の管理下に置かれたままでよいのでしょうか。社会において自分の行動に責任を取らなくてよい人間が,社会における決定者になってしまう。まずは,18歳を成人年齢としてあつかうようにする必要があるでしょう。そのうえで,被選挙権も引き下げ,若い人たちが積極的に政治に参加し,これからの日本を作っていくことが大切です。


掲載日:2015年7月13日
次回の掲載は,2015年8月10日の予定です。

[2015/06/08] 日本が目指す観光立国とは-後編-


 日本食,買い物,自然・景勝地,まち歩き,温泉(おんせん)旅館,酒,歴史・文化。これらはすべて外国人観光客が日本観光に期待する項目(こうもく)だそうです。どれも自分自身の国ではできないことばかりですね。
 日本にはどんな食べ物があって,どんな人たちが住んでいて,どんなくらしをしているのか。そんな関心や興味があるからこそ,外国人観光客が日本に来るのではないでしょうか。つまり,日常の体験ができないこと,言いかえれば異文化(いぶんか)体験を求めて人は旅行に出かけるわけですね。

 では,今後も外国人旅行者を増やし続けていくためにはどうしたらよいのでしょうか。ここまでのお話しから,その答えは簡単(かんたん)ですね。日本が外国人旅行者の求める異文化体験を提供(ていきょう)し続けていくことです。

 そのためには,第一に,魅力(みりょく)ある観光資源(しげん)を開発していかなければなりません。ただし,これは日本中どこでもできることです。なぜなら,そこに住んでいる人にとっては日常であり,かつ普通(ふつう)のことが,外国人旅行者にとっては非日常の異文化体験になるからです。そのときに大切なのは「地域(ちいき)の特色を大切にする」ということでしょう。自分の住んでいる地域の文化や歴史,伝統技能・技術などを身につけていくことも必要かもしれません。

 二つ目に大切なのは宣伝(せんでん)です。どんなに魅力ある観光資源を開発しても,それを外国人に知ってもらい,そこへ行ってみたいと思ってくれなければなににもなりません。現在はインターネットを上手に使うことで,安価で情報が発信できます。ホームページだけでなく,その地をおとずれた外国人旅行者が自分の感動を発信することで,新しい観光客を呼(よ)んでくれるという効果もあります。

 三つ目はサービスの向上です。外国人旅行者が満足し,また日本に来てみたいと思ってもらうことがこれからは特に重要です。日本人は親切で「おもてなしの心」を持っている人が多いと言われています。みなさんも困(こま)っている人を見ると,手助けしてあげたいと思うでしょう。しかし,外国人旅行者が路上で困っているときに,気軽に声をかけることはできますか。言葉の問題がありますよね。やはり英語がある程度使えないと,気軽に声をかけることもできません。これから日本では,どんな地方でも外国人旅行者がおとずれるようになるでしょう。そして日常的に外国人と接する機会も増えてきます。みなさん一人ひとりが英語の力を身につけることは,とても大切なことになるのです。

 これから,ますます少子高齢化(こうれいか)が進み,人口が減少していく日本。資源のとぼしいこの国で観光はこれからますます重要な産業になっていくことでしょう。観光立国を目指すなかで,みなさん自身も貴重(きちょう)な資源の一つなのかもしれません。


掲載日:2015年6月8日
次回の掲載は,2015年7月13日の予定です。

[2015/05/11] 日本が目指す観光立国とは-前編-


 私(わたし)の恒例(こうれい)行事は花見。今年も3月末ごろに東京の上野公園へ行ってきました。桜並木(さくらなみき)の下では多くの人が写真を撮(と)っています。しかし,例年とはなんとなくちがう感じがしました。写真を撮っている人たちが話しているのが日本語ではなかったのです。たくさんの中国語を耳にしたように思いました。

 それもそのはず。観光庁(かんこうちょう)によると,2014年に日本を訪(おとず)れた外国人旅行者は1341万3600人で前年より29.4%も増加,2年連続で最高を記録しました。このうちアジア地域(ちいき)からの旅行者は1061万人と全体の79%をしめています。国・地域別では,1位が台湾(たいわん)で282万人,2位が韓国(かんこく)で275万人,3位が中国で240万人,4位が香港(ほんこん)で92万人,5位がアメリカ合衆国(がっしゅうこく)で89万人と続いています。

 今年に入っても外国人旅行者数は増加し続けているようです。日本政府は東京オリンピック・パラリンピックが開催(かいさい)される2020年までに,訪日(ほうにち)外国人旅行者数を2000万人,そして2030年までには3000万人にするという目標をかかげています。このままのペースで増えていけば,この目標を達成できる見通しです。というよりも,2016年には予定よりも早く2000万人をこえる可能性があります。

 さて,外国人旅行者が増加することの利点(メリット)は,人口減少傾向(けいこう)にある日本にとって非常に大きいといえます。滞在(たいざい)人口が増えることは,国内消費が増えることそのものだからです。しかも,観光立国は日本経済(さいせい)再生に役立つだけではありません。外国人旅行者が増え,日本の文化・生活・食材などを体験してもらうことで日本のファンを増やし,日本のブランド力,世界における日本の存在感や発信力,ひいては外交力を高めることにつながります。

 では,これだけ外国人旅行者が増加しているのはなぜでしょうか。さまざまな理由がありますが,おもなものは次の3つだと考えられています。
 第一は,現在日本の通貨である円の価値(かち)が低い,つまり円安の状況(じょうきょう)だからです。これにより外国人旅行者はこれまでより安い金額で旅行を楽しむことができるようになりました。
 次に,東南アジア諸国(しょこく)連合(ASEAN・アセアン)の国々に対してビザの取得用件が下がったからです。手続きが簡単(かんたん)になったので,気軽に日本を訪れることができるようになりました。
 さらに,LCC(格安航空会社)が次々と日本で誕生し,海外のLCCも日本に乗り入れるようになったからです。このため,日本を訪れる費用が安くなっています。

 ところで,今後も外国人旅行者を増やし続けていくためには何をしていけばよいでしょうか。この点については来月考えてみたいと思います。


掲載日:2015年5月11日
次回の掲載は,2015年6月15日の予定です。

[2015/04/13] きれいな桜が咲くために必要なものは冬の寒さ


 日本は四季の変化がはっきりとしています。夏はとても暑かったのに冬は極寒(ごっかん)。ただし,そうは言っても,寒い冬から春になり,あたたかさを実感できるようになると桜が咲(さ)きます。桜にはいろいろな種類がありますが,特に日本で人気があるのがソメイヨシノです。ソメイヨシノはまるで団体行動をしているかのようにいっせいに咲き,そしていっせいに散っていきます。
 今日はこれに関する話題を。

 みなさんは「休眠(きゅうみん)打破」という言葉を知っていますか。実は桜の花のもとは夏に作られます。これを花芽(かが)といいます。花芽は10月ごろまでに花弁などを作ってつぼみのもとができ上がっていきます。ここまでで,いつでも開花できる準備が整うことになります。しかし,春になるまで花は開きません。

 その理由は冬の厳(きび)しい寒さを乗り切るためです。そのため,葉で成長抑制(よくせい)ホルモン(成長をおさえる成分)が作られ,花芽に運ばれ,花芽は休眠状態になります。

 では,休眠状態になった花芽はどのようにして目覚めるのでしょうか。それには一定期間低温(5℃前後)状態になることが必要だといわれています。この状態になると,成長抑制ホルモンが壊(こわ)させていき休眠から目覚めます。このことを「休眠打破」といいます。

 1月下旬(げじゅん)ごろに目覚めた花芽は,あたたかくなるにつれて急速に成長し春のはじめに花を咲かせます。開花するには休眠打破後のあたたかさも必要です。日本は南北に長い地形をしていることから,南から順番に咲いていきます。この開花日を線でつないだものが桜前線です。

 最近この桜前線が乱(みだ)れる傾向(けいこう)があります。九州地方南部より東京のほうが早い場合があります。その理由は,暖冬(だんとう)によって冬の期間の低温状態の時間が不足し休眠打破が起こるのがおそくなったためだと考えられます。一方で,東京などの都市部では周辺地域よりも気温が高くなるヒートアイランド現象が起こっています。これらの理由から,東京が九州地方南部よりも早く開花する年が出てきています。

 桜前線を見るだけでも地球温暖化や異常気象など地球規模で起こっていることが身近に感じることができます。

 それにしても桜が咲くためには冬の寒さが必要なんて,なんだか人の成長にも似ているようでおもしろいと思いませんか。


掲載日:2015年4月13日
次回の掲載は,2015年5月11日の予定です。

[2015/03/09] 災害ボランティアについて考えよう


 1995年1月17日午前5時46分,明石海峡付近を震源地とした阪神・淡路大震災が発生しました。阪神高速道路が横倒れになり,ビルが倒壊したニュース映像を見たときの衝撃とおどろきは,20年たった現在も忘れることはありません。この震災によって,6400人以上の方々がなくなりました。
 この震災は,大都市をおそった直下型地震だったため,非常に大きな被害が出ました。また,この震災をきっかけとして,いくつかの大きな変化がありました。

 今年で阪神・淡路大震災から20年。節目の年です。今回は,この震災をきっかけとした大きな変化のうち,災害ボランティアに焦点をあてて見ていきましょう。

 阪神・淡路大震災以降,災害ボランティアが急増しました。それまでもボランティア活動はありましたが,それほど一般的ではありませんでした。それが阪神・淡路大震災のときには,地震直後からボランティア活動がさかんにおこなわれ,1日平均2万人以上の人々が被災地にボランティアとしてかけつけました。そのため,1995年は「ボランティア元年」と呼ばれるようになりました。

 しかし,当初はさまざまな問題点があったようです。

■被災地の側の問題点
・行政(市・町・村などの自治体)の受入体制が整っていなかった。
・経験豊富なコーディネーター(全体の統一性を考え調整や進行をする人)がほとんどいなかった。
■ボランティア側の問題点
・宿舎や食事のあてもなく,やみくもに来た初心者ボランティアが多かった。

 結局のところ,被災地にこれだけ多くのボランティアを受け入れる体制が整っていなかったことが問題を大きくしました。どこにどれだけの人数が必要で,何をやってもらうかということを情報収集し,ボランティアに指示をするコーディネーターも不足していました。ですから,せっかく多くのボランティアがいても有効に活動してもらうことが難しかったのです。

 また,災害ボランティアの多くが初心者だったため,ボランティア側にも大きな問題点がありました。困っている人たちを助けたいと考えてボランティア活動に参加してはいるものの,食料や宿舎を確保していないため,被災地でこれらを当然のように要求してくる人たちが実際にいたということです。これでは,人助けをしている,社会のために役立っているのだと自己満足にひたっているだけで,ボランティア活動とはほど遠く,単に現場をかき乱しているだけの存在になってしまいます。

 これらの点をふまえ,国や県がボランティアによる防災活動の環境整備を進めることになりました。また,1月17日が「防災とボランティアの日」に指定されました。

 公立中高一貫校入試において,ボランティア活動に関する問題は多く出題されています。しかし,災害時のボランティアということになると,かなりおもむきがことなることを自覚しなければなりません。わたしたちにできることをいま一度考え直してみましょう。


掲載日:2015年3月9日
次回の掲載は,2015年4月13日の予定です。