公立中高一貫校をめざす方へのお役立ちサイトです。
ぜひご活用ください!

カッシー先生

PROFILEカッシー先生プロフィール

カッシー先生

中学受験36年のキャリアがお届けするとっておきの秘策。特に公立中高一貫校の適性検査では,社会科的な知識だけでなく,算数で学習する割合なども同時に求められます。社会と数的処理をじっくり解説していきますよ。
高桐アカデミー塾長 カッシー先生
ホームページ http://www.kotoac.com

[2018/09/10] いまや日本は「移民大国」なのです-その1-


 最近街中で,外国人の店員さんをよく見かけるようになったと思いませんか。特に,コンビニエンスストアやファミリーレストランに入ると,外国人の店員さんによく出会います。しかも,東京や大阪などの大都市ばかりではありません。地方都市でも増えています。いったい何が起きているのでしょうか。

 安倍首相は,「移民政策はとらない」と宣言した上で,外国人労働者の受け入れを増やしています。安倍首相によると,「移民」とは,日本に入国した時点で永住権を持っている者であり,仕事をするためや勉強するために日本に入国する者は「移民」にあたらないという立場を取っています。

 今の日本政府が取っている政策は,労働力不足を補うために外国人労働者は必要だが,日本で永住することは認めていないのだから「移民」ではないということのようです。

 国際的に合意された「移民」の定義はありませんが,よく引用されるのが,1997年に当時の国連事務総長が国連統計委員会に提案したものです。それによると,移民とは,「通常の居住地以外の国に移動し,少なくとも12か月間その国に居住する人のこと」と述べられています。移動する目的や原因には関係ないので,転勤,留学,研修,海外旅行なども12か月以上であればすべて移民にふくまれることになります。

 国際移住データベースは,世界約200の出身国・地域別に1年間のOECD(先進工業国の経済協力機構)加盟35か国への外国人移住者を集計しています。日本への移住者は「有効なビザを保有し,90日以上在留予定の外国人」を計上しています。

 それによると,2015年は,1位がドイツ(約201万人),2位がアメリカ合衆国(約205万人),3位がイギリス(47万人),4位が日本(約39万人),5位が韓国(約37万人)でした。

 つまり,日本は2015年の時点で実質的に世界第4位の移民受け入れ国になっているのです。2018年はさらに増えているでしょう。

 外国人が日本で長期間滞在するためには,在留資格が必要です。在留資格には,日本で働くことを目的とした資格と,技能実習生や留学生など,働くことを目的としない資格に分けられます。その割合は,前者が18.6%にすぎず,ほとんどが後者です。しかし,後者に属する人たちが日本の労働力を支えているのも事実です。

 技能実習生とは,日本で技術や知識を習得するために,日本の企業が雇用する外国人のことです。本来は母国でその技能を活用することが目的なのですが,人手不足を解消する手段として利用する企業が問題となっています。

 留学生には1週間あたり28時間までのアルバイトが許されています。日本語取得など留学本来の目的よりも,日本でのアルバイトを目的とした場合も多く,問題となっています。

 少子高齢・人口減少社会となっている現在の日本で,このまま外国人を受け入れ続けていくべきなのか,次回のコラムで考えていきたいと思います。


掲載日:2018年9月10日
次回の掲載は,2018年10月8日の予定です。

[2018/08/13] 自宅周辺のハザードマップを見たことがありますか


 7月上旬,岡山県や広島県をはじめとした西日本各地を,記録的な豪雨がおそいました。

 このたびの西日本豪雨による被災者の方々に,慎んでお見舞い申し上げます。また,被災地等におきまして,復興支援などの活動に尽力されている方々に深く敬意を表しますとともに,皆様の安全と一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

 さて,今回の水害で大変注目されているものがあります。それが「ハザードマップ」です。ハザードマップとは,一般的に「自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で,被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図」とされています。

 今回,このハザードマップが注目されているのは,岡山県や広島県で起こった水害が,このハザードマップで示された被害想定通りに起きたということです。つまり,あらかじめ想定されていた通りに起こった災害なのに,なぜこんなにも多くの犠牲者を出してしまったのかということです。

 ハザードマップは,日本では1990年代に作成が進められてきました。2000年に起きた北海道の有珠山噴火のときには,事前に作られていたハザードマップと行政の避難指示に従い,住民や観光客が迅速に避難できました。その結果,温泉街が火山の噴出物でうもれるなどの大きな被害が出たにもかかわらず,一人の死傷者も出なかったのです。

 この災害により,ハザードマップは一躍注目されるようになり,全国の自治体で作成が進められてきました。いまでは約80%の自治体でハザードマップが作られています。

 岡山県倉敷市でも,ハザードマップが作られており全戸に配布されていたそうです。しかし,住民の中には,「そんなものがあったとは,知らなかった」と言う人が多かったのです。

 広島市の水害現場では,100年前にも今回とほとんど同じ場所で,同じような水害が起きていたそうです。そのときのことを教訓に,対策を立てていた家は今回の水害でほとんど被害を受けていないそうです。

 私はこの話を聞いたとき,東日本大震災の津波の被害を防いだ石碑のことを思い出しました。その石碑には「これより下には家を建てるな」と書かれていたそうです。その教えを守った集落は,一軒も津波の被害にあわなかったそうです。

 最近の災害は「これまで経験したことのない...」とよく言われます。確かに,雨の降り方や気温の上がり方など,気象現象が激しくなってきていることは事実でしょう。しかし,防災に関しては事前の予測であるハザードマップや先人の教えを活用することで,対応していくことが可能だと思います。

 自治体は,ハザードマップを作って配布するだけでなく,住民に知らせる努力をし,住民は行政任せにせず,自ら知る努力をすることが大切です。また,地域コミュニティーを日ごろから構築しておき,個人がしっかり動く準備をしておくことが,避難情報が出たときに大切になってくるのではないでしょうか。


掲載日:2018年8月13日
次回の掲載は,2018年9月10日の予定です。

[2018/07/09] 18歳成人で求められることとは何か


 2018年6月,成人年齢を18歳に引き下げる民法改正案が国会で可決されました。これにより,2022年4月から成人年齢が18歳になります。今回はこの問題について考えてみましょう。

 現在世界のほとんどの国で,成人年齢は18歳以下になっています。日本のように,20歳で成人するという国はごく少数に限られています。日本でも公職選挙法の改正により,選挙権はすでに18歳になっています。
 選挙権があるのに未成年であるというのは,確かに違和感があります。

 そもそも,未成年と成人とでは何がちがうのでしょうか。成人とは,自分一人で法律的行動をおこなうことができる人のことで,わかりやすく言うと,自分の行動に自分で責任を取ることができる人ということです。

 たとえば,高額の商品を買う契約をしても,未成年なら親の同意がないことを理由にその契約を取り消すことができますが,成人では契約が成立しているため,その代金を支払わなければなりません。

 つまり,成人になると自己責任で対処しなければなりません。クレジットカードを作ったり,消費者金融を利用したりすることも成人になれば可能です。

 また,現在女性は16歳,男性は18歳で親の同意があれば,結婚できます。これからは男女ともに18歳にならなければ結婚できません。逆を言えば,高校3年生で誕生日を過ぎれば,同級生同士の同意だけで結婚できるようになります。

 1970年代にアメリカ合衆国,オーストラリア,ドイツ,スウェーデンなどの国々が成人年齢を18歳に引き下げましたが,その主な理由は徴兵の義務が18歳以上に課せられていたためだと言われています。

 日本には軍隊がありませんから,徴兵の義務もありません。成人年齢を18歳にする合理的な理由があるとはいえません。社会はグローバル化・高度化が進み,ますます複雑になっています。まして,人生100年時代と言われるこれからの世代に,高校3年生で成人にする必要があるのでしょうか。

 何より問題なのは,このことに関して主権者である国民の考えが反映されているのかということです。国会で十分な話し合いがされてきたのかということです。

 これまでは,高校を卒業してから約2年間社会人として,または大学生として経験を積んでから成人になっていたのが,これからは高校3年生でいきなり大人の仲間入りをすることになります。これまで以上に学校など教育機関の果たすべき役割が大きくなるでしょう。現在中学2年生以下の人たちは18歳で成人になります。いまからしっかり自覚して準備をしてください。


掲載日:2018年7月9日
次回の掲載は,2018年8月13日の予定です。

[2018/06/11] 観光公害という問題を考える


 みなさんは「観光公害」という言葉を知っていますか。「公害」だけなら聞いたことがあるけれど・・・という声が聞こえてきそうですね。

 観光公害とは,観光客が大勢来ることにより,住民の生活環境(かんきょう)がおかされることを意味する言葉です。

 たとえば,京都では観光客の増加により市内を走るバスが大混雑になり,病院に行くお年寄りがバスに乗れないという状況(じょうきょう)が起きています。そこで,京都市は市バスの「1日乗車券」をこれまでの500円から600円に値上げし,市バスと市営地下鉄の両方を利用できる「京都観光1日乗車券」を1200円から900円に値下げしました。これにより,観光客を地下鉄に誘導(ゆうどう)し,バスの混雑緩(かんわ)を目指しています。

 日本で観光客が多い都市としては,京都や奈良,日光が有名ですね。1年間の観光客数は,京都市がおよそ5500万人,鎌倉市がおよそ2100万人,奈良市がおよそ1400万人,日光市がおよそ1070万人です。ところが1平方キロメートルあたりで比べてみると,京都市がおよそ67000人,鎌倉市がおよそ555000人,奈良市がおよそ51000人,日光市がおよそ7300人となり,鎌倉市が突出しています。つまり,鎌倉市はせまい場所に観光客が集中しておし寄せている典型的な都市なのです。

 こういった状況の鎌倉市で今年のゴールデンウイークに,世界でも例がないといわれる社会実験が江ノ電を舞台におこなわれました。

 江ノ電は,鎌倉駅と藤沢駅とを結ぶ総延長10キロメートルの短い鉄道なのですが,沿線(えんせん)には鎌倉の大仏や江ノ島など,人気の観光スポットが数多くあります。全線34分の電車旅は,国外からの観光客も引きつける人気路線となっています。

 利用者も増加し続けています。2011年の年間利用者1529万人から,2016年には1887万人と5年間で23%も増加しています。その一方で,観光客がおし寄せるゴールデンウイークは,沿線住民にとっては簡単に乗れなくなってしまう不便な期間となっているのです。

 そこで,地元の住民は長蛇(ちょうだ)の列に並ばずに優先乗車ができるようにする,という社会実験をおこなうことになりました。具体的には,鎌倉市が発行する「江ノ電沿線住民等証明書」を改札で提示すると,改札外の乗車待ち列に並ばすに,改札を通ることができるというものでした。証明書の交付が受けられる対象エリアの鎌倉市民はおよそ35000人います。これに同エリアの在勤者,在学者も対象になります。

 つまり,こういった実験をおこなわなければならないほど,実際に困っている人が大勢いるということです。

 国の調査によると,2017年の訪日外国人旅行客は2869万人で過去最多を記録しました。日本政府はこれまで,2020年に訪日外国人旅行客数の目標を年間2000万人,2030年までに3000万人としていましたが,この目標を引き上げ,それぞれ4000万人,6000万人にしたほどです。

 観光客が増加するということは日本によい経済効果をもたらします。しかし,観光地に住む住民にとっては日常生活を制限される「観光公害」そのものかもしれません。鎌倉市がおこなった実験がそれらの問題を解決する糸口になればよいと思いました。


掲載日:2018年6月11日
次回の掲載は,2018年7月9日の予定です。

[2018/05/14] 何はともあれ,百聞は一見にしかず!!


 東京駅からJR中央線に9分ほど乗車すると,四谷駅に着きます。そして,2分ほど歩くと,「こんな場所が日本にあるのか!!」と目を疑う街並みと,その奥(おく)に真っ白い洋風宮殿(きゅうでん)が見えてきます。この宮殿が迎賓館(げいひんかん)赤坂離宮(りきゅう)です。

 この宮殿はもともと,大正天皇が皇太子(こうたいし)時代に,その住居とするために建築された西洋式宮殿です。この宮殿建設に政府は相当力を入れたようで,当時の日本の建築家,学者,芸術家,技術者などが総動員され,国家プロジェクトとして取り組まれました。

 外観や内装(ないそう)もすばらしいものですが,地震や火災に対しても十分な対策(たいさく)がされています。そのため,関東大震災(だいしんさい)にもたえられる絢爛豪華(けんらんごうか)な宮殿が完成したのです。

 もちろん,これだけのものを作るには多額の費用がかかりました。その額は,現在の貨幣価値(かへいかち)にして1000億円ともいわれます。しかし,明治天皇には「豪華(ごうか)すぎる」という理由で気に入ってもらえず,皇太子ご夫婦(ふさい)がここに住むことはほとんどなかったそうです。

 1945年の終戦後,皇太子(現在の天皇)の住居として利用された時期がありましたが,その後,1948年に皇室(こうしつ)財産から国の財産へと変わりました。

 国会図書館や弾劾裁判所,東京オリンピック組織委員会などに利用された時期もありましたが,国際関係の緊密化(きんみつか)の流れの中,外国からのお客様をお迎(むか)えするのにふさわしい施設(しせつ)が必要になりました。こうしてこれまであまり注目されてこなかったこの宮殿を,迎賓館として利用することになりました。6年間にわたっておこなわれた大規模(だいきぼ)改修工事が終わり,1974年,迎賓館赤坂離宮が完成しました。

 明治時代,当時の日本の威信(いしん)をかけて作り上げたこの宮殿は,やっと活躍(かつやく)の場があたえられたように思います。

完成してから100年後の2009年,迎賓館赤坂離宮は国宝(こくほう)に指定されました。国宝とは,文字通り国の宝です。国宝というと,歴史的に古いものをイメージしますね。現在,明治以降に作られた国宝はほかには1つだけです。何かわかりますか。そうです,富岡(とみおか)製糸場です。富岡製糸場は,世界文化遺産(いさん)に登録された2014年に国宝にも指定されています。

 以前は期間を区切って公開していた迎賓館赤坂離宮ですが,2016年からは通年で公開しています。内部のようすなどはインターネットでも見ることができますが,やはり直接見るほうがそのすばらしさをより実感できます。機会があればぜひ見に行ってください。


掲載日:2018年5月14日
次回の掲載は,2018年6月11日の予定です。

[2018/04/09] 国語の勉強方法で悩んでおられる方へ


 1月のコラムでは国語の文章問題を読み取るヒントを述べましたが,今回は国語の勉強方法についてまとめていきます。

 国語といえば読解力ばかりが注目されますが,実は国語の基礎となるのは,語い力です。たくさんの言葉を知っている人は,それだけ文章内容を理解しやすいといえます。

 この対策には,たくさんの漢字を覚えることと,慣用句や和語といった語いを増やすことしかありません。漢字の学習は一人でできるので,どんどん覚えていきましょう。公立中高一貫校入試を考えると,漢検5級までは必須です。できれば漢検4級まで目指してほしいと思います。なお,漢字を覚える際,その字の持つ意味をしっかり理解しましょう。一方,語いを増やすには読書が最も効果的です。本を読んで知らない言葉の意味を辞書で確認しながら覚えていけば,自然に語いが増えていきます。

 今回私が特におすすめしたいのが,小学生新聞を使った学習法です。朝日小学生新聞と毎日小学生新聞がありますね。実際に購読している方は多いと思いますが,うまく活用できているご家庭は少ないようです。マンガだけ読んでいる子どもさんも多いでしょう。しかし,それではもったいないですね。

 まず取り組んでほしいのは音読です。音読は,語学学習の基本です。国語も日本語という言語ですから,英語の学習と同様,音読が大切です。幸い,小学生新聞には漢字にルビがふってあるので,ストレスなく読むことができるでしょう。最もよいのは親子でいっしょに音読することです。親子で自分が気になる記事を一つずつ選んで音読します。その中で知らない語いが出てきたら教えてあげてください。辞書を使っていっしょに調べるのもよいでしょう。あくまで,親子のコミュニケーションの一環として新聞を活用すると考えてください。一日10分程度あればできますのでぜひおすすめします。

 音読が習慣になれば,次にしてほしいのは記事の書き写しです。1週間に2つ以上の記事を選び,ノートに書き写します。長い記事の場合は前文がありますので,それを写すのもよいでしょう。前文のない記事はそのまま全部写してください。小学生新聞とはいえ,記事はプロが書いたものです。書き写すことで文章の書き方を自然に身につけることができます。

 そして,最後にしてほしいのは,書き写した記事の感想を書くことです。写した記事について自分はどう考えるか,どのように思ったのかを言葉にして書きましょう。

 このように小学生新聞を上手に使うことで,語い力や時事問題に関する知識が身につくだけでなく,表現力まできたえることができます。小学生新聞を購読しておられるみなさん,ぜひ取り組んでみてください。


掲載日:2018年4月9日
次回の掲載は,2018年5月14日の予定です。

[2018/03/12] 臓器移植法が施行されて20年が経ちました


 長い間,脳死(のうし)からの臓器(ぞうき)提供(ていきょう)がおこなわれなかった日本で,臓器移植法が施行されたのは1997年10月のことです。この法律によって,脳死と判定された人から臓器移植をおこなうことができるようになりました。

 日本では,以前から脳死を「人の死」とするかどうかが大きな議論になっていました。このため,脳死になった人から臓器移植をおこなうと殺人罪(さつじんざい)になるおそれがあるなど,社会的な壁は高く,臓器移植は長い間おこなわれませんでした。そこで,法律でルールを定めることで,移植医療(いりょう)を進めることになったのです。

 ただし,臓器提供ができる場合を,提供者本人が生前,書面で意思表示をしている場合に限るなど,厳しい条件にしたことから,1年に数件しか臓器移植ができない状況が続きました。
 しかし,2010年に法律が改正され,本人の書面がなくても家族の承諾(しょうだく)で臓器提供ができるようになったため,脳死段階の提供が増えていきました。臓器提供の件数は年々増えていますが,人口100万人あたりの1年間の臓器提供件数で比べてみると,アメリカ合衆国は年間28件に対して,日本は0.7件にすぎません。

 法律ができたのに,なぜ,臓器提供が少ないのでしょうか。日本人は,臓器提供に抵抗感(ていこうかん)があるのでしょうか。

 内閣府が「家族が脳死と判定された場合,どうするか」という調査をおこなったところ,本人が臓器提供の意思表示をしていなかった場合でも,家族の判断で臓器提供を承諾すると答えた人が38%におよびました。本人が提供の意思を表示していた場合は,87%の人がその意思を尊重すると答えています。特に若い世代で臓器提供に積極的な傾向があります。
 こうした調査からは,他国に比べて日本で臓器提供への抵抗感が極端に少ないとはいえません。

 では,なぜ少ないのでしょうか。実は,本人や家族に臓器を提供したいという意思があっても,それが生かされないケースが数多くあるからです。

 脳死からの臓器提供の際は,脳死判定を確実におこなう必要があることから,大学病院や高度な救急医療がおこなえる病院など,全国で896の施設に限定されています。ただ,この数字だけを見れば十分な気もしますね。しかし,課題は続きます。

 厚生労働省が,これらの施設に脳死からの臓器提供をおこなう体制が整っているかどうかを調査したところ,「体制が整っていない」という施設が半数もありました。つまり,これらの病院に搬送された場合,本人や家族に提供の意思があっても,脳死からの臓器提供はおこなわれません。

 一方,「体制が整っている」残り半分の施設のうち,全国でたった62の施設で,20年間,半分以上の脳死からの臓器提供がおこなわれていました。つまり,臓器提供はごく限られた病院でおこなわれているのが現状で,この点が欧米などと大きく異なるところです。

 臓器提供は,提供する本人やその家族の死生観に関わる問題なので,むやみに増やす対策を取ればよいということにはなりません。ただ,本人や家族の意思が生かされていない現状は大きな課題です。

 いまも,移植を必要とする患者が多くいらっしゃいます。その現実と向き合いつつ,こうした課題解決に努力していく必要があるのだと思います。


掲載日:2018年3月12日
次回の掲載は,2018年4月9日の予定です。