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カッシー先生

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カッシー先生

中学受験36年のキャリアがお届けするとっておきの秘策。特に公立中高一貫校の適性検査では,社会科的な知識だけでなく,算数で学習する割合なども同時に求められます。社会と数的処理をじっくり解説していきますよ。
高桐アカデミー塾長 カッシー先生
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[2018/03/12] 臓器移植法が施行されて20年が経ちました


 長い間,脳死(のうし)からの臓器(ぞうき)提供(ていきょう)がおこなわれなかった日本で,臓器移植法が施行されたのは1997年10月のことです。この法律によって,脳死と判定された人から臓器移植をおこなうことができるようになりました。

 日本では,以前から脳死を「人の死」とするかどうかが大きな議論になっていました。このため,脳死になった人から臓器移植をおこなうと殺人罪(さつじんざい)になるおそれがあるなど,社会的な壁は高く,臓器移植は長い間おこなわれませんでした。そこで,法律でルールを定めることで,移植医療(いりょう)を進めることになったのです。

 ただし,臓器提供ができる場合を,提供者本人が生前,書面で意思表示をしている場合に限るなど,厳しい条件にしたことから,1年に数件しか臓器移植ができない状況が続きました。
 しかし,2010年に法律が改正され,本人の書面がなくても家族の承諾(しょうだく)で臓器提供ができるようになったため,脳死段階の提供が増えていきました。臓器提供の件数は年々増えていますが,人口100万人あたりの1年間の臓器提供件数で比べてみると,アメリカ合衆国は年間28件に対して,日本は0.7件にすぎません。

 法律ができたのに,なぜ,臓器提供が少ないのでしょうか。日本人は,臓器提供に抵抗感(ていこうかん)があるのでしょうか。

 内閣府が「家族が脳死と判定された場合,どうするか」という調査をおこなったところ,本人が臓器提供の意思表示をしていなかった場合でも,家族の判断で臓器提供を承諾すると答えた人が38%におよびました。本人が提供の意思を表示していた場合は,87%の人がその意思を尊重すると答えています。特に若い世代で臓器提供に積極的な傾向があります。
 こうした調査からは,他国に比べて日本で臓器提供への抵抗感が極端に少ないとはいえません。

 では,なぜ少ないのでしょうか。実は,本人や家族に臓器を提供したいという意思があっても,それが生かされないケースが数多くあるからです。

 脳死からの臓器提供の際は,脳死判定を確実におこなう必要があることから,大学病院や高度な救急医療がおこなえる病院など,全国で896の施設に限定されています。ただ,この数字だけを見れば十分な気もしますね。しかし,課題は続きます。

 厚生労働省が,これらの施設に脳死からの臓器提供をおこなう体制が整っているかどうかを調査したところ,「体制が整っていない」という施設が半数もありました。つまり,これらの病院に搬送された場合,本人や家族に提供の意思があっても,脳死からの臓器提供はおこなわれません。

 一方,「体制が整っている」残り半分の施設のうち,全国でたった62の施設で,20年間,半分以上の脳死からの臓器提供がおこなわれていました。つまり,臓器提供はごく限られた病院でおこなわれているのが現状で,この点が欧米などと大きく異なるところです。

 臓器提供は,提供する本人やその家族の死生観に関わる問題なので,むやみに増やす対策を取ればよいということにはなりません。ただ,本人や家族の意思が生かされていない現状は大きな課題です。

 いまも,移植を必要とする患者が多くいらっしゃいます。その現実と向き合いつつ,こうした課題解決に努力していく必要があるのだと思います。


掲載日:2018年3月12日
次回の掲載は,2018年4月9日の予定です。