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カッシー先生

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中学受験36年のキャリアがお届けするとっておきの秘策。特に公立中高一貫校の適性検査では,社会科的な知識だけでなく,算数で学習する割合なども同時に求められます。社会と数的処理をじっくり解説していきますよ。
高桐アカデミー塾長 カッシー先生
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[2018/06/11] 観光公害という問題を考える


 みなさんは「観光公害」という言葉を知っていますか。「公害」だけなら聞いたことがあるけれど・・・という声が聞こえてきそうですね。

 観光公害とは,観光客が大勢来ることにより,住民の生活環境(かんきょう)がおかされることを意味する言葉です。

 たとえば,京都では観光客の増加により市内を走るバスが大混雑になり,病院に行くお年寄りがバスに乗れないという状況(じょうきょう)が起きています。そこで,京都市は市バスの「1日乗車券」をこれまでの500円から600円に値上げし,市バスと市営地下鉄の両方を利用できる「京都観光1日乗車券」を1200円から900円に値下げしました。これにより,観光客を地下鉄に誘導(ゆうどう)し,バスの混雑緩(かんわ)を目指しています。

 日本で観光客が多い都市としては,京都や奈良,日光が有名ですね。1年間の観光客数は,京都市がおよそ5500万人,鎌倉市がおよそ2100万人,奈良市がおよそ1400万人,日光市がおよそ1070万人です。ところが1平方キロメートルあたりで比べてみると,京都市がおよそ67000人,鎌倉市がおよそ555000人,奈良市がおよそ51000人,日光市がおよそ7300人となり,鎌倉市が突出しています。つまり,鎌倉市はせまい場所に観光客が集中しておし寄せている典型的な都市なのです。

 こういった状況の鎌倉市で今年のゴールデンウイークに,世界でも例がないといわれる社会実験が江ノ電を舞台におこなわれました。

 江ノ電は,鎌倉駅と藤沢駅とを結ぶ総延長10キロメートルの短い鉄道なのですが,沿線(えんせん)には鎌倉の大仏や江ノ島など,人気の観光スポットが数多くあります。全線34分の電車旅は,国外からの観光客も引きつける人気路線となっています。

 利用者も増加し続けています。2011年の年間利用者1529万人から,2016年には1887万人と5年間で23%も増加しています。その一方で,観光客がおし寄せるゴールデンウイークは,沿線住民にとっては簡単に乗れなくなってしまう不便な期間となっているのです。

 そこで,地元の住民は長蛇(ちょうだ)の列に並ばずに優先乗車ができるようにする,という社会実験をおこなうことになりました。具体的には,鎌倉市が発行する「江ノ電沿線住民等証明書」を改札で提示すると,改札外の乗車待ち列に並ばすに,改札を通ることができるというものでした。証明書の交付が受けられる対象エリアの鎌倉市民はおよそ35000人います。これに同エリアの在勤者,在学者も対象になります。

 つまり,こういった実験をおこなわなければならないほど,実際に困っている人が大勢いるということです。

 国の調査によると,2017年の訪日外国人旅行客は2869万人で過去最多を記録しました。日本政府はこれまで,2020年に訪日外国人旅行客数の目標を年間2000万人,2030年までに3000万人としていましたが,この目標を引き上げ,それぞれ4000万人,6000万人にしたほどです。

 観光客が増加するということは日本によい経済効果をもたらします。しかし,観光地に住む住民にとっては日常生活を制限される「観光公害」そのものかもしれません。鎌倉市がおこなった実験がそれらの問題を解決する糸口になればよいと思いました。


掲載日:2018年6月11日
次回の掲載は,2018年7月9日の予定です。