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カッシー先生

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カッシー先生

中学受験37年のキャリアがお届けするとっておきの秘策。特に公立中高一貫校の適性検査では,社会科的な知識だけでなく,算数で学習する割合なども同時に求められます。社会と数的処理をじっくり解説していきますよ。
高桐アカデミー塾長 カッシー先生
ホームページ http://www.kotoac.com

[2019/08/12] 百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群って?!


 大阪府南部にある「百舌鳥・古市古墳群(こふんぐん)」が7月6日,世界文化遺産に登録されました。点在する古墳は4世紀後半から6世紀前半にかけて作られたもので,世界文化遺産の対象は,現存している88基から厳選された49の古墳となっています。

 その中でも最も有名なのは,墳丘(ふんきゅう)の長さが486mという日本最大の「仁徳天皇陵(にんとくてんのうりょう)古墳(大仙(だいせん)古墳)」でしょう。教科書にも載(の)っていますね。それ以外にも,方墳・円墳・前方後円墳など,多種多様な古墳があるのも大きな特ちょうとなっており,当時の政治的・社会的な状況(じょうきょう)を示す証拠(しょうこ)となっています。そのあたりが「世界遺産に登録するにふさわしい」と判断される理由になったわけです。

 近畿(きんき)地方で唯一(ゆいいつ),世界遺産がなかった大阪府にくらす人たちにとって,この古墳群を世界遺産にするのは悲願だったようです。

 日本の世界遺産としては23か所目です。交通アクセスにもすぐれていることから,観光業界でも新たな商機をビジネスにいかそうと,さまざまな動きが起こっています。

 10年ほど前になりますが,私も大仙古墳の周りを歩いて一周したことがあります。そのときは古墳の大きさを実感できてよかったのですが,池の中にうかぶ巨大な森を見たような感じがしました。展望台などを設けて,上から全体を見て,前方後円墳を実感できるようにすればより感動できたのにと思いました。現在は,ヘリコプターによる遊覧や,VR(バーチャルリアリティー)を活用する取り組みも計画されているようです。

 一方,49基ある古墳のうち29基は天皇や皇族などの墓ということで,参道や一般拝所をのぞき原則非公開になっているうえ,森におおわれていることもあって全容を見ることができないため,観光業界にとっては大きな障がいになっています。

 実際,世界遺産で観光客をよびこむのは難しいところもあります。2017年に世界遺産に登録された「宗像(むなかた)・沖ノ島(おきのしま)と関連遺産群」ではどうでしょう。観光客としては沖ノ島に上陸をしたい気持ちになりますが,この島は「神宿(かみやど)る島」として厳しく入島が制限されており,立ち入ることができません。それ以外の構成資産への観光客は増えているようですが,今後は構成遺産の魅力(みりょく)をどのように伝えていくかが大きな課題となっています。

 それにしても,2013年以降,7年連続で日本国内から世界遺産への登録が続いています。来年は「奄美大島(あまみおおしま),徳之島(とくのしま),沖縄島北部および西表島」,2021年には「北海道・北東北の縄文(じょうもん)遺跡群」を世界遺産に推薦(すいせん)することが決まっています。まだまだこれからも増え続けていくのでしょうか。


掲載日:2019年8月12日
次回の掲載は,2019年9月9日の予定です。

[2019/07/08] IoTは私たちの大きく社会を変える?!


 IoT(アイオーティー)という言葉を聞いたことはありますか。あらゆるモノがインターネットにつながることで,それぞれのモノから個別の情報を取得し,その情報をもとにして最適な方法でそのモノを制御(せいぎょ)するしくみのことです。

 このIoTを組みこんだ家電を「スマート家電」と呼んでいます。

 スーパーマーケットなどでの買い物中に,「あれ? そういえばこの野菜,まだ冷蔵庫に残っていたっけ?」という経験をしたお母さんも多いと思います。しかし,スマート家電の冷蔵庫なら,外出先から庫内に取りつけてあるカメラを使ってスマートフォン経由で食材をチェックできるので,買い忘れや重複買いを防止できます。それだけでなく,冷蔵庫の食材から,おすすめのレシピも調べられるので,料理するときに,献立(こんだて)になやむことも少なくなります。

 帰宅する前に「部屋をすずしくしておきたい,またはあたたかくしておきたい」と思ったとき,スマート家電のエアコンなら,外出先からスマートフォンでエアコンの操作(そうさ)ができるので,帰宅時に部屋が快適な温度にすることができます。スマートフォンで温度を設定できるだけではなく,エアコンの電源を切り忘れたかな,と思ったときにでも自宅にもどらずにスマートフォンで電源を切ることもできます。

 IoTを取り入れることで,第一次産業も大きく様変わりします。たとえば,稲作農家にとって水田管理はとても大切です。特に水位を適切に管理することで,気温の変化に左右されない一定の水温を保つことができます。しかし,広い水田の水温管理を人力でおこなうには手間と時間がかかります。

 そこで活やくしているのが水田センサーです。このセンサーには通信機能がついていて,10分おきに水温と水位のデータを送ってくれます。このデータをスマートフォンでチェックすることで,必要に応じて水位の調節ができるようになります。いちいち水田に行く手間がはぶけることで,時間に余裕ができます。

 IoTによってあらゆるモノから個別の情報を取得できるため,クラウド(コンピューターサーバー)上にはぼう大なデータが集まってきます。このぼう大なデータのことをビッグデータと呼びます。このビッグデータをAI(人工知能)が学習し分析(ぶんせき)することで,これまで以上に必要とされている製品やサービスの開発に利用され,社会も変化していくことになります。

 しかし,社会がよくなるように変化していけばよいのですか,個人情報の保護や,ビッグデータの活用の仕方など,これからの社会に必要な新しいルールをどうするのかといった点では課題が残っていると思います。


掲載日:2019年7月8日
次回の掲載は,2019年8月12日の予定です。

[2019/06/10] 植物工場で野菜を生産する利点とは??


 今回は,公立中高一貫校入試の最新トピックである植物工場を取り上げます。

 種まきから収かくまでを建物の中でおこなうのが植物工場です。この工場が登場したのはいまから30年以上前の1980年代でした。

 理科の授業で,植物が発芽するためには水と空気と適温が必要であり,成長するためにはそれに加えて肥料と日光が必要だと学習しましたね。植物は光合成をおこない,自らでんぷんなどを作り出します。光合成とは,水と二酸化炭素を原料として,葉緑体という工場ででんぷんなどをつくるはたらきのことで,そのときにエネルギー源として日光を利用しているとイメージすればわかりやすいでしょう。そのとき出る余り物が酸素です。

 植物工場では日光の代わりに人工光を使い,土を使わずに水耕さいばいをおこないます。また,工場は室内なので空調設備を整え,植物の成長を管理することができます。自然環境(かんきょう)に左右されずに野菜を育てることができます。

 しかし,そのためには工場や設備の建築費や空調,人工光の維持(いじ)管理費など多額のお金がかかります。また,品質の整った野菜を生産する技術を確立することが難しく,企業(きぎょう)として利益を出すことができない時代が長く続きました。

 2000年代に入ると,植物工場を取り巻く環境に変化がおとずれます。天候不順により野菜の価格が上がり,一方で,LEDを用いることで電気代をおさえることができるようになり,植物工場の採算が取れるようになったのです。

 ここで余談。
 光合成がさかんにおこなわれるには,室内の人工的なLEDの光よりも自然の中での太陽光のほうがよいと思いませんか。しかし,その考えはまちがいです。太陽光の中には植物の成長をはばむ光がふくまれているため,LEDを使って成長に必要な光だけを当て続ければ,自然の中で育てるよりも短い時間で収かくできるようになります。さらに,当てる光の組み合わせを変えることにより,特定の栄養素,たとえばビタミンAをたくさんふくんだ野菜をつくるといったこともできるようになっています。

 また,農場で育てられる野菜は自然環境の変化により生育に大きな差が出ます。一方,植物工場では,当てる光だけでなく,工場内の温度,湿度(しつど),二酸化炭素濃度(のうど)などもコントロールすることにより,1年を通して同じ品質の野菜を出荷(しゅっか)できます。

 それらの変化により,植物工場は企業にとっても利益をもたらす存在になりつつあります。消費者にとっても,安全安心な野菜をいつも同じ値段で買うことができるという魅力(みりょく)は大きいですね。


掲載日:2019年6月10日
次回の掲載は,2019年7月8日の予定です。

[2019/05/13] 文章を正しく読む力を身につけるには??


 公立中高一貫校受験のための塾に通っているにもかかわらず,「国語の成績がほとんど伸びない」という話を,ここ数か月間で立て続けに聞きました。

 今回は,少し毛色を変えて,なぜそんなことになるのかをお話しします。

 通常,塾でおこなう指導は受験国語とよばれます。いわゆる,筆者が書いた本の一部分を切りぬいて,入試問題のようにその文章にぼう線を引いたり,空らんを設けたりして設問をつけた問題を解いていくという方法です。私たち塾業界では,こういった問題を「文章切りぬき問題」とよんでいます。

 確かに,試験と同じような問題を解けば問題慣れにはつながりますが,この方法では国語力は身につきません。なぜなら,この方法では文章を読む基礎力が養成できないからです。

 また,国語力の本質は「文章を正しく読む力」を身につけることですが,この「読む訓練」につながりません。サッカーでいえば,パスやドリブルの練習をせず,ひたすら試合をしているのと同じで,試合の形式に慣れても上達がないのと同じです。

 では,国語力の本質である「文章を正しく読む力」を身につけるにはどうすればよいのでしょうか。

 答えは1つ。音読です。

 声に出して一語一語正確に読み進めるだけです。この音読訓練を半年続けるだけで,国語の成績はだれでも必ず伸びていくと断言できます。

 国語力の低い子は,正しく字面を追うことができず,それゆえ,文章を正しく読むことができません。音読は,なにより正しく字面を追う訓練につながります。また,意味のかたまり(文節)ごとに読んでいるか,わからない言葉がないかの確認もできます。

 まさにいいことずくめです。

 一見地道な訓練のように思えますが,こういったことを続ければ最短ルートで国語力が身につきます。ぜひ,「文章切りぬき問題」に手を染めてしまい,時間をむだにしないでいただきたいと思います。

 参考コラム [2018/04/09] 国語の勉強方法で悩んでおられる方へ


掲載日:2019年5月13日
次回の掲載は,2019年6月10日の予定です。

[2019/04/08] 地球温暖化対策の緩和策と適応策


 気象庁によると,日本の年平均気温はここ100年ほどで1.2度上がっています。このままでいくと,60年後には東京が鹿児島県の屋久島のような気温になるともいわれています。年を追うごとに,最高気温が30度以上の真夏日や,35度以上の猛暑日(もうしょび)も増えています。これにより,デング熱などの感染症(かんせんしょう)の原因ウイルスを広める蚊(か)の生息域が北上するなどのえいきょうが出始めています。

 では,みなさんは地球温暖化対策といえば何を思いうかべますか。電気や水をむだ使いしない,車のアイドリングをやめる,買い物のときはエコバックを持参するなどにより,二酸化炭素のはい出を減らすことでしょうか。

 ただし,これらは地球温暖化の進行をおさえるための対策で,「緩和(かんわ)」といわれています。もちろんこれらも大切なことですが,現実には地球温暖化が進行しており,えいきょうが出続けています。一方,これらの悪いえいきょうを減らしたり,さけたりすることを「適応(てきよう)」といいます。

 ヨーロッパでは,10年以上も前から国全体で「適応」のための対策が進められています。日本でも,2018年6月に気象変動適応法が成立しました。この法律では,温室効果ガスのはい出削減対策(緩和策)と,気候変動のえいきょうによる被害を減らしたり軽くしたりする対策(適応策)が両輪だと位置づけられています。そして,国,地方公共団体,事業者,国民が気候変動適応を進めるためにになうべき役割を明確化し,適応策を強力におし進めようとしています。

 国は,農業や防災等の各分野の適応をおし進める気候変動適応計画をつくり,その進展じょうきょうについて,はあく・評価手法を開発します。そのうえで,気候変動えいきょう評価をおよそ5年ごとにおこない,その結果にもとづいて計画をつくり変えていく予定になっています。

 具体的な適応策としては,高温でも育つ農作物の品種改良,魚類の分布が変化したことに対応した新しい漁場の整備,てい防やこう水調整しせつなどの整備などが考えられます。また,ハザードマップの作成をうながしたり,熱中症予防の対策を進めることなども考えられます。これらは,地方公共団体や事業者が中心となっておこなうものから,国民の生活に密接に関係するものまでいろいろあり,いずれもすばやい対応が必要なものばかりです。

 みなさんも,緩和策だけでなく身近にできる適応策についても考えてみましょう。


掲載日:2019年4月8日
次回の掲載は,2019年5月13日の予定です。

[2019/03/11] どうなるブレグジット!!-世界が大注目-


 みなさんは,「ブレグジット」という言葉をご存じでしょうか。これは,イギリスのEU離脱(りだつ)問題を指します。2016年6月におこなわれた国民投票により,イギリス国民はEUから離脱することを決めました。その離脱期限が2019年3月29日にせまっています。

 これまでイギリスはEUと交渉し,できるだけおだやかにEUから脱退しようとしてきました。しかし,イギリスのメイ首相がEUと交渉してまとめた離脱合意案を3月12日,イギリス下院は大差で否決しました。EUと合意しないまま離脱することもできますが,そうなると経済が混乱し,国民生活に大きなえいきょうが出ます。すると,13日にはこの「合意なき離脱」も否決したのです。そして,14日には離脱期限を3月29日から6月末日まで延期することを可決しました。

 どう見ても,イギリスは迷走しているとしか思えません。いったいどうしてこんなことになったのでしょうか。2016年7月13日のコラムでも取り上げましたが,そもそもイギリス国民は本当にEUから脱退したかったのでしょうか。

 ある調査によると,24才以下のイギリスの若者は70%がEU離脱に反対しているものの,実際に投票したのは40%にすぎなかったとのこと。もし,もう一度国民投票が実施されたのなら,EU残留派が多数をしめるのは確実といわれています。EU離脱派の人たちもEUとの貿易で関税がかかることには賛成していません。しかし,移民は受け入れたくないのです。

 つまり,EU離脱を主張する人たちも,一方的に離脱するのではなく,EUに加盟していることの恩恵(おんけい)はそのままで,自分たちが我慢(がまん)しなければならないことだけイヤだと言っているのです。これでは,EU諸国と離脱案をまとめることは困難を極めます。

 EUには現在28か国が加盟しています。イギリス以外の国にとってもイギリスがこのまま脱退することは大きな問題です。というのも,イギリスは加盟国の中でドイツに次いで2番目の経済規模をほこっており,他のEU諸国との貿易では大きな赤字となっているのです。つまり,EU諸国はたくさん商品を買ってくれたお得意様を失ってしまうことになるわけです。また,イギリスが負担してきた加盟分担金を,今後は他の加盟国が負担しなくてなりません。つまり,EUにとってはイギリスの離脱は簡単には認められないことなのです。

 2016年6月に戻りたがっているイギリス人もいるようですが,一度おこなわれた国民投票の結果は重いものがあります。イギリスがこれからどうなるかはまだわかりませんが,私たちも対岸の火事とするのではなく,教訓となるように見守っていく必要があると思います。


掲載日:2019年3月11日
次回の掲載は,2019年4月8日の予定です。

[2019/02/11] 社会に目を向け,疑問に思い,考え続ける


 このコラム(カッシー先生のゆったり教室)が始まって早6年が過ぎようとしています。これまでさまざまなテーマを取り上げ,現状をお伝えしてきました。

 2018年に限ってみても,臓器移植(ぞうきいしょく),迎賓館(げいひんかん),観光公害,成人年齢(ねんれい),ハザードマップなど,主に社会に目を向け,私の意見を述べることよりも,現状をお伝えし,みなさんにいろいろ考えてもらいたいという思いで,このコラムを続けてきました。

 もしかしたら,「こんなテーマが,本当に公立中高一貫校入試に出題されるのかな??」と思った人がいるかもしれませんね。

 しかし,私は,「公立中高一貫校入試に出題されるかどうか」だけで,取り上げるテーマを選んだわけではありません。

 確かに,2018年11月12日に掲載したプラスチックごみは,今春,複数の公立中高一貫校入試で取り上げられ,「マイクロプラスチックに関する問題が解けた」というメールも頂きました。

 2018年8月13日に掲載したハザードマップについては,昨年,自然災害が多く発生したこともあり,予想通り,公立中高一貫校入試で出題が増えました。

 ただし,取り上げるテーマは,「私たちが暮らす社会に目を向け,疑問に思い,考え続けるための材料になるかどうか」を基準にしています。

 公立中高一貫校入試は,さまざまなテーマが出題材料になり,切り口も千差万別です。何が出題されるかわからない中で,「的中をねらう」こと自体,意味があるとは思えず,そもそもそんな努力をするだけむだというものでしょう。

 それよりも,どういったテーマが出題されても対応できるように,日ごろから「社会に目を向け,疑問に思い,考え続ける」ことを大切にしたほうがよほど有益なはずです。さらに,この取り組みは入試対策という枠(わく)を軽くこえていくはずです。
 もちろん,このコラムに限ったことではありません。

 ぜひこれからも,みなさんの身のまわりにあるさまざまなことに興味・関心を持ち,疑問に思い,考え続けていってほしいと願っています。

 小学6年生のみなさん,小学ご卒業,おめでとうございます。


掲載日:2019年2月11日
次回の掲載は,2019年3月11日の予定です。

[2019/01/14] 米中貿易戦争とアメリカ大統領選挙


 現在,アメリカ合衆国(がっしゅうこく)と中国はおたがいに関税を引き上げて,「貿易戦争」のような状況(じょうきょう)になっています。世界第1位と第2位の経済大国ですから,そのえいきょうは世界に広がりつつあります。

 最初に仕掛(しか)けたのはアメリカ合衆国です。トランプ大統領(だいとうりょう)は2018年7月,中国からの輸入品340億ドル分に25%の関税を上乗せしました。さらに8月には160億ドル分に25%の関税を上乗せし,制裁(せいさい)の規模(きぼ)は合わせて500億ドル相当にのぼりました。9月には第3弾の関税措置(そち)が発表されました。これに対して,中国は,アメリカ合衆国の措置は国際ルールに違反しているとして,同じ規模のアメリカ合衆国からの輸入品に25%の関税を上乗せする対抗(たいこう)措置をとったのです。

 なぜ,アメリカ合衆国は中国に対してここまで強引な貿易戦争を仕掛けているのでしょうか。それは,2015年に中国が発表した「中国製造2025」にあると思われます。中国はこの計画で,2049年までに情報通信技術,工場や家庭向けのロボット,自動車など,10分野の産業を重点的に強くし,世界一になることをねらっています。

 しかし,中国はアメリカ合衆国や日本など外国の会社に対して,中国に進出することを認める見返りとして,進んだ技術を教えるように求めたり,外国の技術をまねたりして成長してきました。

 このような中国の国家主導的な産業政策そのものを変えることをトランプ大統領はねらっているのです。具体的には,金融(きんゆう)分野などへの外国の会社単独での進出を認めること,中国との合弁企業を設立する際に技術の移転を求めないこと,中国政府による企業への不公平な補助金をやめることなどが,その主な内容です。

 トランプ大統領は,2020年11月におこなわれる大統領選挙で再選されることを最終目的としています。そのために,国民が納得する成果を上げようと必死になっているのです。昨年11月の中間選挙では,野党の民主党と引き分けともいえる結果に終わっています。このままでは2年後の選挙での再選が難しいと判断し,連邦議会と対立しても,メキシコとの国境(こっきょう)に壁を建設しようとしています。

 メキシコとの国境に壁を建設することや,中国に高い関税をかけることは,トランプ大統領が選挙でアメリカ国民に約束した公約の中にふくまれています。トランプ大統領は,これまで選挙での公約を次々と達成してきました。大統領になって2年で,その達成率は8割をこえており,これは近年にない達成率だといわれています。

 中国との貿易戦争でもトランプ大統領はアメリカ国民が納得する成果を示せるようになるまでは手を引かないと思われます。逆に言うと,アメリカ国民が納得する成果を出せれば貿易戦争も終わるということです。現在,アメリカ合衆国と中国ではこの問題で交渉(こうしょう)が進められています。早くこの問題が終わらなければ,世界経済にも大きなえいきょうをあたえることになります。


掲載日:2019年1月14日
次回の掲載は,2019年2月11日の予定です。

[2018/12/10] 道徳が教科になって何が変わった??


 小学校で2018年4月から道徳が教科になりました。中学校で教科になるのは2019年4月からです。教科になると,教科書を使うようになり,先生から「評価」も受けるようになります。すでにみなさんは通知表でその評価を受けたはずです。先生からどのようなコメントをもらいましたか。

 これまでも「道徳の時間」の授業は年間35時間ほど確保されていましたが,教科ではなかったため,教科書も評価もありませんでした。しかし,今年からは「善悪(ぜんあく)の判断」「誠実(せいじつ)」「国や郷土(きょうど)を愛する」など,教える内容が学年ごとに20項目ほど決められており,教科書はこれをすべて取り上げなければなりません。

 教科書検定時には,「伝統文化の尊重や郷土愛が不足している」として,教科書で取り上げられていた「パン屋」や「和菓子屋(わがしや)」に変わったことは,マスコミでも大きく取り上げられ,「意味のあることなのか」と話題になったことは記憶(きおく)に新しいところです。

 評価の方法は,国語や算数のように点数表示ではなくコメント記載(きさい)となっており,公立中高一貫校入試で道徳の評価が用いられることはありません。

 しかし,評価する側と評価される側がいる以上,そこには模範(もはん)解答とよべるものがあるはずです。教科書で示されたお手本が模範解答であるならば,高い確率でよい評価をもらうためには,「教科書に書かれてある模範解答をそのまま答えればよい」と考える児童がいても不思議ではありません。これでは,「考える」という行為が置き去りにされ,道徳が単なる暗記科目になってしまいます。

 道徳の教科化は,「人の心を評価する」ものなのか,または,「教科書に書かれてある模範解答を丸暗記する」だけのものなのかという点で,大きな危険性をはらんでいることを忘れてはいけません。


掲載日:2018年12月10日
次回の掲載は,2019年1月14日の予定です。

[2018/11/12] リフューズの必要性とプラスチックごみ


 スターバックスコーヒーやマクドナルドなどが,今後,プラスチック製ストローの使用を取りやめると発表しました。ストローよりもカップやふたで使われているプラスチックのほうが,はるかに量が多いのではないかと思われるかもしれませんが,問題は量ではなく大きさです。ストローは小さすぎて,リサイクルができないのです。

 プラスチックは19世紀後半に発明され,これまでに世界で83億トン生産されてきました。そのうち,はいきされたのは63億トンにのぼりますが,その中に回収されていないプラスチックは,実に57億トンもあるといいます。それらがどれだけ海に流入しているか,はっきりしたことはわかっていませんが,絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)もふくめた700種近い海洋生物にえいきょうをあたえ,毎年多くを死に追いやっていると推定(すいてい)されています。漁網(ぎょもう)にからまるなど,目に見える形での被害もありますが,目に見えない形で被害を受けている生物はもっと多いのです。

 プラスチックは自然に分解しませんので,くだかれて細かくなっていきます。最終的には,直径5mm以下の微小(びしょう)なプラスチック粒子(りゅうし)となり,これは「マイクロプラスチック」とよばれます。そして,いまでは動物プランクトンからクジラまで,あらゆる大きさの海洋生物の体内から,このマイクロプラスチックが見つかっており,深海のたい積物から北極の海氷にまでおよんでいます。

 3Rは,もうみなさんは知っているね。ゴミをできるだけ出さない「リデュース」,使えるものはくり返し使う「リユース」,そして「リサイクル」の3つですね。日本では,この中で「リサイクル」だけが注目されていますが,ペットボトルや空きかんのリサイクル率が上がっても,そのための費用やエネルギー消費を考えると万能ではありません。

 そもそも,最終的にごみとして処分しなければならないものを,家庭内に持ちこまなければ,ごみは出ないはずです。そのためには「リフューズ」が大切です。「リフューズ」とは,必要のないものを断るという意味です。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどでもらうレジ袋を断る,レストランなどで自分のはしを持参し,わりばしを断る,などが考えられます。「リフューズ」を「リデュース」から独立させ,強調することがこれから必要になってくるのかもしれません。

 現在,日本政府はレジ袋の有料化を義務づけようと検討を進めています。すでに複数のスーパーマーケットではレジ袋の有料化が進み,マイバックの持参が増えるなどの効果が出ています。しかし,これらの規制を国が中心になって進めていかなければならないものなのかどうか深い議論が必要です。問題はレジ袋だけではないのですから。


掲載日:2018年11月12日
次回の掲載は,2018年12月10日の予定です。